カテゴリ:TOKYO百景( 4 )

TOKYO山景~花~

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桜がほころぶ四月一日。
訃報が届いた。
下手くそなブラック・ジョークかと思ったら本当で。

桜吹雪の舞い散るなかでお骨を拾った。
彼女のお骨は、舞い散る花びらと同じ色をしていた。

とても陽気な人だった。
遠縁ではあったけど、私が幼い頃お世話になった人。
子供には恵まれなかったけど、旦那さんとは仲良しで。皆から好かれていた。

在職中に発病したけど、定年まで、勤めあげ。
二度のガンの再発に耐え抜いてホスピスで最期を迎えた。

亡くなる当日の午前中まで、見舞にきた友人と笑い話していたそうだ。
友人が帰った直後に急変して亡くなった。

今年、見送る二人目の人だった。

あと何人見送ればいいんだろ?
途方に暮れた。
我が家には、いつお迎えが来ても不思議ない老人と病人が数人いる…。

そんな思いにかられた翌日、妹に電話をしたら吉報を聞かされた。
二人目を身篭ったと。
秋に生まれる予定だと。
とても嬉しそうだった。

一つの花が散る。
一つの花が咲く。

それは、自然の掟なのだろう。

けれど、今はまだ、散った花への未練が…まだ見ぬ命への期待を上回ってしまう。

何とも言えない気持ちになって、久しぶりに奥多摩湖へ…。

自宅から片道約70キロ。往復140キロの道のり。

平地では葉桜だったものが、山が近づくにつれ、桜吹雪になり、標高をあげるごとに山櫻が姿を現す。

季節が逆戻りしてゆく…。

目を奪われながらも、ひたすらペダルを踏み込み。呼吸を整えながら上る。

果たして…奥多摩湖は、咲き誇る山櫻と様々な花達に彩られていた。
色とりどりの花々と新緑、青い空と湖…。

あぁ…そうか。
散った花は、終わりじゃないんだ。
花は、独りで咲くんじゃないんだ。
互いに互いの養分となって、咲き誇る。
繰り越し、繰り越し……。


花が咲き。
風に舞い。
葉は繁り。
実が稔り。
鳥が啄み。
地に帰る。

そして再び……芽吹くのか。
何度でも、何度でも。

泣きたくなるよな、眩しい景色。
あたしも、いつか…
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by BicycleKomachi | 2014-04-18 05:40 | TOKYO百景

新宿駅-ターミナル-

「梅を見に行こうよ。」

親友に誘われて、湯島天神を目指した。
待ち合わせは御徒町。
以前なら自転車で向かうところだが…。

昨年末に縦断の旅を終えてから、私は、一種の燃え尽き状態となっており。
年明け早々、婚家で葬式もあり。
それに伴うゴタゴタの余波を受け、ひどく疲れやすくなっていたので電車を使うことにした。

新宿駅でJRに乗り換える。

ホームで乗り換えの電車を待つ間…会話が耳に入った。

「あなた、だいじょうぶ?」
「……。大丈夫です。」


私の母くらいの年の女性が屈みこみ、ホームに座り込んだ女の子に向かって話しかけている。
暖かそうな、おかあさん、という雰囲気の女性。

座り込んだ女の子は学生さんだろうか。
あどけなさの残る顔立ちで、蒼白な顔をしていた。

「本当に、だいじょうぶ?」
「……はい、ありがとうございました。」
「そう?なら良いけれど…。しっかりね。」


心底心配そうな声を残して、おかあさん、は立ち去った。

女の子はホームに座り込んだまま。
一瞬空を見上げて、ため息もつかず、また、下を向いた。

ちらと見えた目元は化粧気がなく。
それでも本来、きれいな瞳の持ち主であることを思わせた。

その瞳は、今、下を向いている。

声をかけようか?
まよった瞬間、もう一人、女の子を見つめている女性に気が付いた。
上品な白髪交じりの老婦人。

一方、電車の入り口付近の列に並ぼうとした若い男性は、足元の女の子に気付いたものの、戸惑い顔。
チラチラと見やった後、見てはならぬものを見たような表情を浮かべ、やってきた電車に乗り込み、立ち去った。

この時間、電車は3分置きにやってくる。

あと二本、見送ろう。
それで、女の子が立ち上がらなければ、声をかけよう。

私は、そう決心した。
女の子は下を向いたまま。
緩慢な手つきでバッグを探り、ハンカチを取り出した。
私は、傍らの自販機で暖かいミルクティーを買った。
女の子が立ち上がらなければ、それを渡すつもりで。

渡した後、どうしよう?
まずは、ミルクティーを飲ませて。
落ち着く場所で話を聞かなくては。

このあたりの喫茶店は落ち着かない。
もっと静かな場所が必要だ。

そのまま湯島につれていこうか?
それとも新宿御苑が良いだろうか?

親友なら、どちらも許してくれるだろう。
メールで一本。
新宿御苑に来てくれ、と送れば、訳も聞かず、来てくれるはず。

あと一本、次の電車が来たら…。
息をつめながら、老婦人と私は女の子を見守った。
間に女の子を挟み、1.5メートルの距離を保ちながら。

老婦人の白髪の向こうに駅員の姿が見えた。
上背のある厳しい顔つきの男性駅員だった。

駅員は女の子に近づき、女の子を立ち上がらせた。
背中に手を添えてやり、駅員室に促した。

もう、だいじょうぶ。
老婦人と私は視線を交わし、それぞれの電車に乗り込んだ。

わたしは右側の電車。老婦人は左側の電車。

新宿駅は、ターミナルだ。
猥雑なものと、きよらかなものと。
やさしさと、厳しさと。
強い意志と、怠情。
したしみと、さりげない距離感。
東京、という町の、すべてが交差するターミナルステーション。

言葉も交わさない、でも、確かな、一瞬の関わり。
わたしは御徒町で親友と合流し、湯島天神に向かった。

むせかえるような梅の香の中で。
わたしは、願をかけた。
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by BicycleKomachi | 2014-03-10 11:11 | TOKYO百景

共白髪

いよいよ年の瀬ですね。
皆様いかがお過ごしでしたでしょうか。

さて、この師走の時期に祖母が入院してしまいました。と言っても、それは転んで骨折したせいで、命にかかわるものではありません。ところが実家に顔を出すと、思わぬ光景がありました。

かつてない程、しょんぼりしたお祖父ちゃん。一体どうしたの?

「ああ、mikoちゃんか。お祖父ちゃんは、もういかん。寂しい。お祖母ちゃんがいないと寂しい…」

!?
確かに、祖母は認知症にも関わらず祖父の世話だけはアレコレしようとしていました。時には暖房28度の部屋で更に祖父に上着を着せるものだから、かえって祖父がのぼせてしまう事もあるくらい。でも、いまは叔母が手伝いに来てるし、隣には父夫婦もいるし。昼間はヘルパーさんが来てくれるし。

「いや…夜、目が覚めるんだよ…お祖母ちゃんがいたら『オォィ…』って言えば『どうしたの?』と答えてくれるのに。今はおらん。横が空っぽだ…」

お祖父ちゃんは、寂しい…寂しい…と何度も繰り返しました。かつての威厳ある教師の面影は跡形もなく。体もすっかり縮んでしまって、捨てられた子供のようなその姿に私は唖然呆然。
「もう…毎日こうなの」
叔母と義母。
いささか以上にショック。
翌日、お祖母ちゃんのお見舞いに行くことにしたものの気が重く…。

正直、恐かったのです。お祖父ちゃんがコレなら、お祖母ちゃんは一体どんな事になっているやら…と。

結局、夕方近くになって家をでて。電車だと移動中気が滅入りそうだったので自転車で。

ペダルを踏み込んでいると、少し気が紛れるのを感じました。靖国通りを駆け抜け、新宿を越え、阿佐ヶ谷でお花を買い…病院に着く頃には、すっかり日は暮れていました。

まだ面会できるかな…。
恐る恐る受付を覗くと、中年の男性が、患者さんとおぼしきお婆さんの相手をしていました。
お花を抱えて、話の区切りを待っていると、顔をほころばせ

「お見舞いですか?奥の階段を上がってナースステーションで手続きしてくださいね。」

時間、まだ大丈夫ですか?
「まだまだ大丈夫。ゆっくりしてあげて下さいね!」
患者さん達が、見舞い客を待ち侘びていることを、よくよく心得ているようでした。

病室の祖母は壁に向かって食事をしていました。向かい合う祖父がおらず、代わりに真っ暗なテレビに向かって、背中を丸めながら、所在なさげに食事を持て余していました。

おばあちゃん!
呼び掛けました。振り向いた祖母は、顔をクシャクシャにして涙を流して喜んでくれました。嬉しい、嬉しいと繰り返し。

祖母に昨日会った祖父が、寂しがっていた事を伝えました。最初、祖母には信じがたいようでした。

「まぁ…一緒にいるときは、そんな事、一言も言わないのに…」

物凄くさみしがっていたよ、と重ねて伝えると祖母が私の指輪を見やり、呟きました。

「そう言えば、昔、お揃いの指輪をしてる若い人をみて『あんなのは私達の頃にはなかったなぁ』って言ったら、指輪を買ってきてくれた事があったわね。さすがにお揃いではなかったけど。私は指輪を傷つけちゃいけないと思ってしまっておいたら『なんごて、あれつけないか』って。」

お揃い、欲しい?
じゃあ退院したら買いに行こう。

祖母は笑いました。

「お祖父ちゃん、つけてくれるかしら。」

今なら、つけるわよ。
だから、元気に退院しようね。

そう言い置いて病院を出ました。ふと見れば風花が舞っていました。

大切な人を失ういつかの寂しさと、共にあることの喜びは背中合わせ。
それでも共白髪になるまで一緒にいた祖父と祖母の日々が一日でも永く続きますように…。
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by BicycleKomachi | 2011-12-31 23:22 | TOKYO百景

TOKYO夜想曲~鈴虫~

この数日、月がとても綺麗。
月があまりに綺麗だと、人の心も揺れるようで。

例えば、一昨日の帰路のこと。
まるで、すっぽりと自分の軸が抜け落ちてしまったような感覚。
それは唐突に訪れて、自分でも訳が分からない。

仕事は派遣とはいえ、4年以上安定してる。
やりがいもあるし、人間関係も悪くない。
恋人は優しい。
そりゃ、仕事とプライベートと些細な行き違いはあったけれど、時間をおかずに誤解はとけた。

だから、なんで、こんなに気持ちが揺れるのか、全く訳が分からない。

それなのに。
まるで、全てのものが陽炎のように儚く思えて。
何一つ、自分の手の中にないような。
昨日まで、私の手にあったと思っていたものたちが指の間からすべり落ちてしまうような。
そんな感覚。

JR田町駅の改札をくぐり、空を見上げると

月が光っていた。

たまらなくなって走り出すと、東京タワーが見えた。

あそこに行かなけりゃ。

何故か、強く思い。
オレンジ色の光にさそわれた、夜光虫のように。
ぐるぐるとタワーの周囲を走った。

オレンジの光を眺めながら、タワーのふもとを上り下りするうち
気持ちが落ち着いてくるのを感じた。
震災の後、再びともった、あたたかいオレンジの光。

り.り.り.りり...........

ふいに聞こえてきた、それは。
タワーの展望台の入り口に飾られた、無数の風鈴。
タワーの光を反射してキラキラと輝きながら、
透明な風の音楽を奏でていた。

この音、届けたい。
思わず恋人に電話。

ねぇ、この音聞こえる?

.......鈴虫?
どこにいるの?


電話を通したそれ、は、鈴虫の音に聞こえていたらしい。
都内で鈴虫が聞こえるなんて、何処にいるのかと。

電話を切ると、もう、あの心もとない気持ちは消えていて。
向島の我家を目指しペダルを踏んだ。

おかえり。
冷たいミントティーをいれてあるよ。
さっき、ベランダを手入れしてたら、伸びすぎてた。
少し刈り取ったんだ。


差し出されたガラスのコップ。

それを両の手で包み込み、息を深く吸い込んだ。
ああ、戻ってきた。
そう感じながら。
鈴虫の余韻を楽しんだ。

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by BicycleKomachi | 2011-07-17 08:57 | TOKYO百景


自転車にのってポタポタと、野を越え山越え気付けば日本海までいっちゃった。


by BicycleKomachi

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